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質問力特集

質問力特集

大学授業レポート~新たな学びのスタイル~

松本客員教授は、前職の新聞記者時代、15年以上にわたり、大学を中心に教育分野を取材してきた。そして、3人の子どもの親としても、学校教育にかかわってきた。それらの経験を通じて感じていたのは、なぜ、小学校低学年では、子どもは授業中、挙手をして質問をするのに、学年が上がっていくにつれてその数は減り、大学の授業では学生からほぼ質問が出てこなくなるのかということだったという。
「先生は『質問はありますか?』と子どもたちに聞きますが、それはもう授業が終わろうとしている時間帯が多いのではないでしょうか。そうすると、子どもは知りたいことがあっても挙手をしにくくなってしまいます。空気を読むからです。『知りたい』という気持ちが質問として出てきますが、質問をすることで、周りの邪魔をするのではないかと思い、質問が出てこなくなってしまう。質問を自由に出せる授業が必要ではないかと考えたのです」(松本客員教授)
このような思いを新聞記者時代に大学関係者に話したところ、「じゃあ、そうした授業をやってみませんか」という提案があり、帝京大学と上智大学で授業を受け持つことになった。
想定外の提案に驚きつつも、シラバスを作成するため、改めて学生を観察すると、質問力の重要性が見えてきたという。
「問うことがなければ、社会に対する関心がどんどん低くなっていきます。実際、大学生の視野が狭くなってきていると感じました。私が大学の取材を始めた2007年頃の学生の視野を、自分を中心とした半径10メートルだとすると、今は半径1メートル、ひょっとしたら目とスマートフォンの間の30センチ程度しかないかもしれません。これからの社会を担う学生の視野を広げ、自分で物事を考える人として社会に送り出さなければ、日本は立ち行かなくなると危機感を抱きました」(松本客員教授)

質問づくりを通して、他者の視点で物事を捉える

教材に選んだのは、新聞だ。リアルな社会をオンタイムで伝え、社会全体を俯瞰できる新聞で、学生に社会を見る目を開かせたいと考えた。授業の課題は、授業当日の朝刊から選ぶことで、学生の「今」を考える力を鍛えている。
授業で重視されるのは「自分以外の誰かになりきる」ことだ。同じ記事でも、自分と、自分以外の誰かの視点では、見え方が全く違ってくる。例えば、ウクライナ問題にしても、日本の大学に通う自分と、ウクライナに暮らす学生では全く受け止め方が異なる。これを理解するために「なりきる」のだ。学生たちはチームになって、授業以外の時間を使い、「自分以外の誰かの立場」を明確にした上で質問をつくり、その質問に基づいて文献を読み込む。そして、翌週の授業で質問を発表、質疑応答を行う。
「学生の多くは、卒業後には企業で働きます。仕事では、相手が何を求めているのかを想像して、商品を企画したり、提案したりすることが重要です。また、その商品を利用することによって、何か不利益が生じないかを見通すことも求められます。自分以外の視点で物事を見る必要があり、そうした力を鍛えようと、『他者の視点』で質問をつくるという課題にしました」(松本客員教授)

授業でもう一つ重要な教材となるのは、「企業人」だ。通常の授業や前編で紹介した「マラソンQ」への参加のほか、学生が企業人にインタビューをしてまとめるという論文課題もある。
「新聞は二次情報です。一次情報である当事者、主に企業に、学生が直接触れることも大切にしています。活字を通して見た社会と、リアルに動いている社会をそれぞれ自分で整理し、融合させることで、社会を俯瞰する力が鍛えられていくと考えています」(松本客員教授)
協力を得る企業は、中小企業が多い。それは、日本は中小企業に支えられているからであり、学生にそこに目を向けてほしいと考えるからだ。

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